消防法の嘘・本当!神宮外苑火災は教員と運営の管理責任!消火活動は?

『消防法に照らし合わせ』の嘘と本当。日本工業大学作品『素の家』火災の理由は運営側の管理、監督責任意識の不足・不行届きなのでは?また、今後どのような対策をするべきか、というテーマで、筆者が過去のこのイベントの作品出展に携わった経験から書き進めいていく。

一応概要を説明すると、東京デザインウィークにおいて、日本工業大学工学部の新建築デザイン研究会の学生らの屋外展示作品である『素の家』で火災が発生、佐伯健二くん(5)が命を落とし、助けに入った両親が負傷した、という事故だ。

火災を起こしてしまった作品は、燃えやすい木くずと木枠で構成されており、TVニュースを見る限りでは、焦点は『LED電球か白熱電球か』というところに向いているようだ。問題はそこではない。というか、LED電球でもソケット部分はかなり発熱する。もっと深いところ、イベント運営企業や日本工業大学工学部の顧問である髙桒広太郎氏のスタンスの雑さ、余裕のなさが生んでしまった事故だ。

これだけの事故だ。現状のままでは、学生が製作物を一般に広く公開できる機会を頭ごなしに否定される流れが生まれてしまうかもしれない。思考停止して『危険だから』という人も増えてしまうのではないかと危機感を覚える。感情としては分かるが、それはあってはいけないことだ。事故のリスクに対する事前の細やかなガイドラインと、対策さえきちんと取っていれば、今回の事故は起こりえなかったのだから。

そこで、

  1. 本当に『消防法に照らし合わせ』てあの作品が安全だったのか
  2. なぜ専門分野の教員がついていながら、燃える危険性が想定できる展示物に対して危険性の指摘が出来なかったのか
  3. 東京デザイナーズウィーク株式会社はこの作品の搬入の以前に作品の火災の危険性について指摘は出来なかったのか
  4. 10月25日から開催され事故までに13日が経過していたが、なぜ関係者筋は展示されているこの作品に対し安全性ついての疑問を持たなかったのか
  5. 初期消火が行われなかったのはなぜか

の4つの観点からこの事故について掘り下げていく。

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『消防法』発言の嘘・ホント

多摩美術大学の田淵諭教授は謝罪会見において「展示は消防法にも照らして問題ないように準備してきた。照明など電気を使う場合は電圧にも制限を設けていた。火災が想定されないかは開催前から十分確認していた」と述べている。

一方で川崎健二社長は「作品にとがった部分がないかや、高さなどは確認しているが、全部で600点ある作品の一つ一つを詳しくチェックするのは困難だった。アート作品なので、主催者側からデザインについて、いろいろ注文をするのも難しい」「事前に日本工業大学工学部の提出した書類で構造を確認していたものの、書類には照明と素材の位置関係など詳しい記載はなかった」と述べていた。

この二つの供述は矛盾していることが分かる。照明と素材の位置関係を詳しく把握せずに、消防法に照らし合わせることが出来るのだろうか??不可能だろう。よって、実際に展示される作品が消防法の要件を満たしているか、ということになると、田淵教授の発言は「ウソ」であることが分かるだろう。

「図面上では」消防法は守られていた

学生展に応募するクリエータ―は、大学の学部生だ。大学1年生から4年生までの学生が集まった『新建築デザイン研究会』という学生サークルによって問題の作品は作られた。総勢22名だ。

筆者の東京デザイナーズウィーク出展作品に携わった経験から言うと、1-2年生はまだほとんどデザインに対する考え方が成熟していない。よって3-4年生がグループを牽引して作品を制作することになる。しかし、3-4年生も自身で実際に大規模な作品を制作するのは初めてのことが多い。大所帯をまとめるのは大変だ。不慣れなためデザイン学生はスケジュール管理能力がプロのデザイナーよりずっと低く、大所帯での作業ともなると、納期ギリギリになる、もしくは少し割れてしまう可能性もある。

田淵教授が言及した「図面」は展示の数か月前に提出を求められるので、まだ詳細が書き込まれていない、決定稿でない図面だった、ということだ。

恐らく田淵教授は、事前に提出された図面が正確でなかったことを把握しているだろう。美術大学で教鞭をとっている以上そういった学生たちのバックグラウンドについては折り込み済みだろうし、なにより会場においてある作品と手元の図面を照らし合わせれば気づくことだ。

アート作品における『消防法』とは?

なぜか見落とされているところなのだが、建築物において順守されるべき消防法と、こういったアート作品における消防法は、求められるハードルの高さが違う。アート作品における消防法などあやふやな部分が多いのだ。そのニュアンスについて知る一般人は少ない。アート作品では『表現の自由』を盾に看過されている部分がかなり大きい。よって会場が求めるガイドラインを満たしさえすれば展示が可能であるケースも少なくない。

これが建築物であれば、「消防法に照らし合わせて」木くずの近くに電球を置くことはまずあり得ない。

筆者が同イベントの出展に携わった際は、近くに可燃物があっても電球に不燃のカバーの装着をしてくれ、というような運営側からの指示はなかった。

 

過去の東京デザイナーズウィークに設置された作品を見ても、火災のリスクが高そうなものはいくつかあった。

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例えばこの作品。非常に燃えやすい特徴のある発泡ウレタンと竹の枠組みでできており、中には電球が設置されている。

 

 

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和紙と木の骨組みでできており、それを数か所から照明が照らしている。

 

このように、アートを名目にすると、防火性能などの意識がその世界にあまりないことがよくわかる。このイベントに限った話でもない。長きに渡って見落としていたのだ。

 

顧問の教員はなぜ危険性の指摘が出来なかったか

日本工業大学工学部、新建築デザイン研究会の顧問には、同大学の助教、髙桒広太郎氏がついていた。専門分野は建築意匠。

アウトサイダーアーキテクチャー(体系的な建築知識も有しない者により、独力で建設された建築等)を研究しているようだ。建築物の実施設計に関しては特にプロフィールに書かれていないため、恐らく「建築家」ではないだろう。それに加えておおらかな人柄が伺えるため、学生の作品の危険性に対して細かく口を出していなかったことが予想される。

後に述べるが、東京デザインウィークの作品の危険性のチェックにおいて、団体の顧問が最後の砦だったにも関わらず、だ。

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TDW株式会社はなぜ危険に気づかなかったか

消防法に関する項目で述べたが、川崎社長は「全部で600点ある作品の一つ一つを詳しくチェックするのは困難だった。

アート作品なので、主催者側からデザインについて、いろいろ注文をするのも難しい」「事前に書類で構造を確認していたものの、書類には照明と素材の位置関係など詳しい記載はなかった」と述べていた。

要するに、図面が正確でなかったことは予想できていたが、実際に現地に設置された作品を細かくチェックする余裕はなかったのだ。また、アートを制限したくない気持ちの強さも伺える。実際に筆者が現地に作品を搬入しに行った際は、現地での作品のチェックは全くなかった

そういった理由から、1度目のチェック漏れはほぼ確信犯的に、2度目は人員の余裕のなさゆえに起こってしまったのだ。

 

関係者筋からの指摘は無かったのか

結論から言うと、あったようだ。「同会場コンテナ作品の消防法上の危険性について指摘したが『アートだから』と取り合ってもらえなかった」という発言を確認した。

運営団体まで掛け合おうにも、経費不足のため現地にいたのは学生とボランティアがほとんどだったようだ。それでは対応のしようがない。

 

初期消火が行われなかった理由

近くに消火器が設置されていて、火災を起こした作品「素の家」の近くにいるスタッフが初期消火活動を行っていれば、死傷事故にはならなかったかもしれない。火が付いたらすぐに火元の火の根元に直接消火器を噴射すれば、ボヤ程度の火事であれば鎮火が見込める。

しかし、現地にいたのは緊急事態に対する教育など受けているわけもない、作品を制作した学生やボランティアだ。的確な対応は期待できない。

消火器が近くになかったのは消防法的に問題ないのだろうか。やはりどうもあやふやである。

 

このように、火事の潜在的リスクはあらゆるところに存在していた。日本工業大学の学生が悪いのではない。TDWの周りの全ての人間の連携不足によるものだ。

さらに言うと、経費の不足だ。チェックにかける人員と時間さえあれば、起きなかったはずの事故だ。近年のデザインイベントが活発になっていくのは個人的に喜ばしいことだったがこのような事態になってしまい、不安でしょうがない。デザインにもっと価値を見出す人が増えなければこの問題は解決しない。しかし、デザインに価値を見出せる人を増やすためのイベントを打つお金が不足して起きた事故だったことを考えると堂々巡りだ。

次開催があるとすれば、例えばクラウドファンドを利用してみてはいかがだろうか。

2 Comments

匿名

本当はこの記事がもっと読まれるべきなのだが、学生の氏名が書かれた記事が非常に多く読まれている。
そういう残念な結果になっていることに関心を持ってほしい。

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